 駅前に降り立つと、よくある寂しい地方都 市の趣きだが、そんな見かけに騙されて はいけない。確かにお城があるというの は並みではない。
鉄筋コンクリートのフェイクとはいえお城 があると町がしまる、といいたいわけでは なく、城とともに刻んだ歴史が町にしみ込 んで、何か格を感じさせるのだ。北条早 雲にまで遡るまでもなく、明治、大正、昭 和戦前の歴史が跡を留めていることを知 らない人は多いのではなかろうか。谷崎 や、佐藤春夫、北原白秋といった文学者 が暮らしたというのもただごとではない し、いわゆる財界の大立て者、益田鈍翁 (三井財閥の大番頭)や松永安左衛門 (電力王)の豪壮な隠居所があったりし て、その跡をぶらぶら歩いて回るだけで も、いい散歩になる。また、漁港が至近で 海鮮には事欠かないから、空腹を癒すの にも大きな楽しみが待ち構えている。(穴 倉散士) |  |