1万ヒット記念SS:「3つの願い」 幕間

「うぷぷぷぷーーーーーーっ!!!」
「ひーーーーーーーーっ!! 腹イタイーーーーーっ!!」
「も、も、も、萌えーーーーーーーーっ!!!!」

内裏の屋根の上では、奇妙な服をきた女三人が座り込んでいた。
天界に帰ったかと思われていた萌えの三女神さまだった。
当然ながら、三人は姿を消してここで一部始終を見ていた。

ミミ様は腹をおさえてもがいているし、カズ様は興奮のあまり瓦を叩き割り、ハル様は笑い転げて屋根からころげ落ちそうになり、すんでのところで空に浮かんで難を逃れる。

「鷹男が承香殿であの方達を見事に撃退しちゃった時はこれ以上凄い事なんて起きないと思ったケド」
「ええ、鷹男様はもう最高でしたね!!!」

鷹男と瑠璃、二人を追うべく、三女神様たちは二手に分かれていた。
ミミ様とカズ様は、後宮の天井にふわふわ浮きながら鷹男の一部始終を見ていた。
バッチリなセンスで装飾品を選ぶのも、自ら化粧を施すのも、屈辱の花摘も、全部目撃したのである。
承香殿へ向かう渡殿で、瑠璃だったら野生のカンで簡単に避ける障害に鷹男が立ち尽くしていた時、傍仕えの女房に乗り移って鷹男を助けていたのは、鷹男命のカズ様だった。
居並ぶ女御様達が激しい憎悪と嫉妬で瑠璃(の姿をした鷹男)をにらみつけた時、美しく装った鷹男のバックにキラキラ光をふりまき美しさを倍増させ、彼女たちの敗北感を演出していたのはミミ様だった。

瑠璃にはりついていて、鷹男の決定的な場面を見逃してしまったハル様は、落ち合った二人から仔細を聞いて、両足をバタバタさせて悔しがった。

「わたくし、何かやらかすなら瑠璃のほうだと思ってましたのに!!」

「ほほほ、鷹男についていったわたし達の勝利ですわ」
「ミミお姉さま!! カズはミミ様を信じてよかったです!!!」

悔し紛れにハル様は叫ぶ。

「わたくしだって、すんごい場面を目撃しちゃったんだからーーー!!」

そう、こちらには、絶叫ものの瑠璃の花摘みイベントがあった。
ぽうっ!!と、記憶を再現して、空に映像を浮かばせるハル様。

「ええっ?!」
「うっききゃーーーーーーーーーーーーー!!!!」

何しろ、外見は鷹男なのである。
外見が鷹男なのに、ひとりで、アレを握ってるのである。
こんな場面を見せられて、そっち関係に滅法弱いミミ様が正気でいられようか。

「あ、あ、あ……、瑠璃にすればよかったーーーーーーーーっ!!!!!」
「も、も、も、も、モエ、モエ、モエ………」

後ろで泡を吹いて倒れているカズ様は言うに及ばない。
優しいハル様はその場面を最後までミミ様に見せてあげる。

「くう……。外見鷹男……何をやってもかっこいい……」

自慰がかっこいいっていうんだからもう、お馬鹿もここまで来るとアレである。

「あ、ほら、そろそろ始まりましてよ!!」

勝利の雄たけびをあげて祝勝会中の藤壺から抜け出してきたミミ様カズ様、アチラにはしばらく動きがなさそうだと、三人で紫宸殿の屋根の上で弓の鍛錬を見学する事になっていたのである。

そうして。
瑠璃の第一本目が終わって、ハル様はハンカチを握りしめて悔しそうに叫んだ。

「ミミ様、瑠璃のへっぴり腰はどうにかなりませんの?! 中身が瑠璃でも外見は鷹男ですのよ?!」
「カズも、鷹男が子犬よりも弓が下手なんて風評が流れるなんて、耐えられません!!」

二人が煩いので、ミミ様は仕方なく、瑠璃の背後にまわって二人羽織のように、フォームを矯正した。どうにか格好がついたところで瑠璃が放った矢は、見事に的の中央を射抜く。

「きゃーーーーー、萌え〜!!!!!!」
「ミミ様、グットジョブですわーーーーーーーっ!!!」

ミミ様に向かって声援を送る二人は、カッコイイ鷹男の姿が見れて大満足だった。
ふわふわ空を飛んで屋根に戻ってきたミミ様を迎える二人は目頭に涙を浮かべて、かつての鷹男の勇姿を思い出していた。

「狩衣に弓ですもの。あの時を思い出しますわねぇ……」
「はい!! あの鷹男の姿にわきあがる萌えを感じたんですよね!! わたし達!!!」
「そうでしたねぇ。すべてはあの鷹男から始まったんですわ……」

鷹男(あくまで中身は瑠璃)を見つめながら、三人はうっとりしていた。
鷹男派と呼ばれる方々にとって【狩衣と弓】は神聖なお姿だった。
三人は感動のあまり、瑠璃の次の行動を見ている余裕もなかった。

「あっ!!」

瑠璃がすっころんで最後の矢を天に向けて射たのに、カズ様が気付いて悲鳴をあげる。

「いけません!! カッコイイ鷹男の姿がっ!!!」

鷹男がすっころんで矢を外すなと、三人にとってはあってはならない事だった!!

それからの行動は早かった。
ミミ様は帥の宮を、ハル様は秋篠権中将を、カズ様は高彬を。
それぞれ袖や首根っこを引っ張り一まとめに、矢の落ちてくる方向にぐいぐい引っ張った。

ズサアアアアっっっ!!!!

ハル様は砂埃をあたりに飛び散らせ煙幕をはる。
ミミ様は真剣白羽取りも真っ青のスピードで瑠璃の放った矢をつかみ、その豪腕で三人の袖を射抜く矢を投げつける。
カズ様はどさくさに紛れて、高彬の頬を殴っていた。

結果、瑠璃の放った矢は、三人の公達をまとめて射抜く事となったのである。

「ふう、危ないところでしたわ!!」

ほとんどメチャクチャだった。
だけど、鷹男の評判を落とさずに済んだので、三女神様はニコニコ笑いあっている。
そして。

『これは穢れだな?』

瑠璃の不穏当な言葉に、三人の目が輝き出す。

「お聞きになりました?!」
「聞きましたとも!! 内裏を抜け出すんですよ!! うきゃーーーーーっ!!!」
「それでこそ瑠璃!! さあ、旅のお供の準備をせねば!!!」

瑠璃番のハル様はいそいそと準備をはじめる。

「外は何があるかわかりませんわ。わたし達もぜひご一緒させてくださいませ」
「ダメですわ!! 大人しく鷹男番に戻ってくださいませ!!」

ミミ様カズ様が悔しそうに顔を歪める。

「アチラには高彬が行くんですのよ! もしも高彬が瑠璃を手篭めにしようとしたらどうなさいますの?!」
「はっ! そうでした! 高彬撃退の準備をしなくちゃいけません!!」

アンチ高彬のカズ様は言うなりぴゅーーーんと藤壺へ飛んで行く。

「ミミ様も!! 青空の下にエロはございませんわ。藤壺の密室の下なら……何かあるかもしれませんわよ?!」

ハル様はミミ様を追い払おうとそう付け加えたが、高彬と瑠璃の濡れ場なんぞ、それこそ拷問じゃないかと、ミミ様は思った。 あきらめ切れないミミ様だったが、興奮すると手がつけられないカズ様を一人に出来るわけもなく、仕方なく藤壺へと戻っていった。

「ふふふ、瑠璃のお忍び、しっかりとこの目で拝見させていただきますわーーーーっ!!」

ハル様は拳を振り上げエイエイオーと勝どきをあげて清涼殿へと向かうのであった。



5話と6話の幕間です。 萌え様たちはその時何をしてたか(笑) こっそりUPです。

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