1万ヒット記念SS:「3つの願い」 幕間 3



カズ様とユーキ様が藤壺でハリセン遊びをしていた頃、
ハル様は雑色に身をやつした涼中将と鷹男(中身は瑠璃)を尾行しておりました。
ふわふわと空に浮いていたところを、内裏を抜けてきたミミ様に発見されて合流。
2人は滂沱の涙を流しています。

「これですわよね、ミミ様!!」
「ええ! 鷹男といえば雑色姿。雑色姿と言えば鷹男なのよ!!」
「ゾウシキ・アゲインですわ」
「いえいえ、リメンバー・ゾウシキでしてよ!!」

なんのこっちゃ、ミミ様ハル様混乱中。
2人で踊るように浮かれて鷹男たちのあとをつけておりました。
そのにやけきった姿は、まさに腐○子そのものです。
まあ、街の人には2人の姿は見えないからどうでもいいのですが。

いえいえ、この世の中には2人の姿を見ることの出来る人達がいました。
言わずと知れた天界の方々です。
彼女達は、萌え三女神の鷹男日記の愛読者でもありました。
本来、下界にか関わってはいけない天界人としては、日記から鷹男と瑠璃の様子を探るのが精一杯。
今日も、三人組が何やら面白い事をはじめたぞと下界を見下ろしていたのですが、お目付け役のユーキ様までが下界に降りてしまったため、皆様、とうとう我慢できなくなり、列をなして下界に降りてきてしまったのです。
そして、彼女らが今いるのは……。

「あああん!!! なんかくっついてるーーー!!」
「薔薇よ、薔薇なのよ、この人達は、ひいいいいいい!!!!!!」


鷹男の中身が瑠璃だなんて知らない愛読者の皆様方は、町娘さん達の中に入り込んで涼中将と鷹男を集団で追いかけておりました。

「あ、あら……? なんか、おかしな事になっていません?」
「そうですわねえ、あの町娘さんたち、まさか?!」

浮かれていたミミ様ハル様もここにきてようやく、事態に気付きます。
気付いたものの、相手は鷹男を愛でる会の会員様一同。
常連様でもあり、愛すべきお姉さま方ばかりではありませんか。

ですが、お姉さま達は普段のお姿とは全くの別人でした。
初めて見た生鷹男が雑色姿で立っているのです。
興奮するなというほうが無理なのかもしれません。
追い討ちをかけるように鷹男と涼中将は妙に親密だし、構図は近頃はやりの薔薇ではありませんか。
お姉さま達の目はすっかり血走っていました。

「ゲットするわ!! 絶対にゲットするわぁぁぁ!!」


「お、お姉さま方?! おちついて!!」
「鷹男は瑠璃姫のものですよ!! わかっていますよね?!」

2人は拡声器を持ち出して頭上から叫んでみるものの、聞く耳もっちゃあくれません。
ある者はいとおしげに、ある者は恍惚とした表情で2人の名を呼んでいます。

「お、お姉さまったら!!」

あんまり煩くしすぎたのが悪かったのでしょうか?
鷹男に腰を振っていたお姉さま達が突然こちらに首だけで振り返りました。
お姉さま達は何もおっしゃいません。
ですが、言っております、真顔で。

「「「「「邪魔すんじゃねーゾ!!!、コラァ???」」」」」

俗にガンを飛ばす、とも申します。

「あ……わたくし、急にお腹がすいてきましたわ。ちょっとあの饅頭屋で休憩を……」
「ズルイですわっ!! ミ、ミミもお腹がすいてすいてどうしようもなくて!!」

お姉さま達の迫力に恐れをなした2人は、とっさに逃げ出してしまいました。
そして、その直後に、涼中将の笛吹き事件が発生したのです。



「こ、これはっっ!!」
「お姉さま、ヤカータさま!! どうなされましたの!! 一体何が?!」

2人が、鷹男と涼中将をつけていたお姉さま軍団を寺の境内で発見したのは、その1時間後の事でした。天界人には天界特有のネットワークがあるので、下界で誰がどこにいるのかすぐにわかるのです。

イっちゃった表情で、倒れている町娘さん一同。

「あががが、天国を見た……」
「真っ白になるのねえ、本当だったのねえ……」
「青春よ、さよーならあ……」

何がどうなっているのか、さっぱりわかりません。
瑠璃達の消息を尋ねても、答えはこればっかり。

「お姉さま達がついているから大丈夫だと思ったのに、、、」
「瑠璃を見失ってしまうなんて、どうしましょう」

2人は真っ青になったのでした。





さて、見失った鷹男(中身は瑠璃)と涼中将が、中将の愛人宅を訪問した頃、このお宅に先回りしていた方がいました。

「集団でつけていたんじゃお姉さま達を出し抜く事は無理なんだもの。エイッって賭けに出た甲斐があったわ、ふふっ」

綺麗に着飾って、涼中将にしなだれかかっている女主人の口から漏れた言葉でした。

天界に鷹男ファンは多いけれど、中にはサブキャラ推奨派というのもいて、前々から涼中将に目をつけていた方がいたのです。
密かに涼中将の日常を調べ上げ、愛人宅を把握していた彼女は、先回りして、こちらに来たため、笛吹き事件を回避出来たのでありました。

「今日もあなたは綺麗ですよ」
「ああん、そんな、あっ、ダメっ、中将さまああああ」
「何かダメなのですか? ここ、それとも、こちら?」
「ああ、ああん、夢みたいっっっ!!  ああああぁぁぁぁ!!」

天界ネットワークを使って、下界に散らばっている天界人を調べ上げ、ここを突き止めたハル様ミミ様が屋敷に乗り込んできた時、そんな善がり声をあげていた女主人は、見えないはずのハル様ミミ様を見て、確かに笑いました。
そして、その目はこうおっしゃってました。

「おいしくいただいておりますvvvvv」

それは、まぎれもなく勝者のお姿でした。

「フ、フージさま……」
「わ、私だって、涼様に抱かれたい……。鷹男は好きすぎて無理だけど、涼サマなら抱かれてもいいのにっっ!!」

ハル様は涙目です。
ですが、敗者は黙って消えるのみ。
ポンとミミ様に肩を叩かれ、大人しくその部屋から去ってゆく2人でした。

そしてその直後の事です!!!

「 %*※fjこrlあ#p うわあああああああああああああああ!!!!!!!」

意味不明な事を叫びながら物凄いスピードで駆け抜けてゆく鷹男(しつこいけど中身は瑠璃)に2人は突き飛ばされました。
ボロ屋の壁はまさに鷹男の人型にくりぬかれて、ひゅーひゅーと風が通り抜けております。

「い、一体、何が……?」

草木も眠る丑三つ時。
瑠璃(外見は鷹男)は、太刀も持たず、羅生門近くで迷子になってしまいました。
今度こそ、正真正銘の独りです。

どうする? 瑠璃!!
どうなる? 瑠璃!!



長い事お待たせしました。皆様忘れているかもしれませんが、7話の裏話です。
フージ様、ご出演(笑) そしてもうひと方は、誰だかわかる人、どれぐらいいるんでしょうか(苦笑)


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