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「やっと見つけましたよ」 鷹男は唇の端をあげ、不遜に笑いながら瑠璃に近づいてきた。 あとずさり梅の木に背中をぶつけた瑠璃は逃げ場を失った事に気付いた。 目を右往左往させまわりを伺い、やがて諦めたように鷹男を見上げる。 「お願い、見逃して……」 くすくすと悪戯っぽい笑みをうかべたまま、鷹男は梅木に手をかけ瑠璃に迫った。 「駄目ですよ。あなたに触れなくてはこの遊びは終わりません」 それならば早く触れてくれればいいのに、鷹男はもったいぶって瑠璃の体には一切ふれて来ない。 「捕まえて差し上げますよ。だから目を閉じて?」 鷹男の綺麗な顔がどんどん近づいてくる。 瑠璃はたまらず目を閉じた。 すると唇に何かが優しく触れ、やがてふさあっと暖かい衣で全身を包まれ、抱き上げられた。 「どこへ行くの? 次はあたしが鬼でしょ?」 不審に思って尋ねると、鷹男は嬉しそうに笑って耳元に囁く。 「隠れ鬼はおしまいです。寒くなってきましたから戻りましょう?」 「ええ〜、もうおしまいなの? 次はあたしが鬼なのに」 まだ遊び足りない瑠璃は口をとがらせる。 「まだ私が鬼です。古来から鬼は美姫をさらって食らうものですよ。大人しく私に食べられてください」 瑠璃は顔を赤く染めると抗議した。 「馬鹿馬鹿馬鹿!! なんでそうなるのよ、さては初めからそのつもりだったわね?!」 「何とでもおっしゃってください。私は戦利品をゆっくり味合わせていただきます」 腕の中で暴れる瑠璃をしっかりと抱きとめ、鷹男は上機嫌で藤壺へと戻っていくのであった。 絵:逢瀬千鳥様 |
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