栃木県栃木市(2013年11月)



蔵の街として知られる栃木県栃木市。 戦災を免れた為、市街地には江戸から明治にかけての蔵造りの家が多く残っている。 江戸時代には市内を流れる巴波川(うずまがわ)の舟運が盛んで、さらに日光例幣使街道の宿場町として賑わいをみせていたそうである。 天気の良い日に思い立ち、カメラ片手に街並み散歩に出かけた。

東武日光線の栃木駅で降り立つと、駅前から広くて立派な通りが延びる。 しかし思っていたより道行く人の姿が少ない街であった。 栃木市という名から県庁所在地かと思われるが、県庁所在地は宇都宮である。 なぜ県名と同じ名を冠する栃木市に県庁が無いのは不思議な気もするが、もっと活気のある街であって欲しいと思われた。






蔵の街 栃木

栃木市には安土桃山時代の天正年間に栃木城があったが、江戸の初期に廃城になったそうである。 その為城下町というより、巴波川の舟運による江戸と日光や南会津などの後背地との物資の集散地として栄えたそうである。

江戸とは利根川や渡良瀬川を大型船を使って運行し、途中で高瀬舟に積み替えて巴波川を遡行して栃木まで運んだようである。 しかし市内を流れる巴波川を見ると、とても舟運が盛んであった川には見えない。 現在は観光船が川面をゆったりと浮かんでいる。


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栃木市を代表する風景 巴波川沿いの黒塀




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【 郷土参考館 】

郷土参考館は江戸時代に質屋を営んでいた坂倉家の母屋と土蔵を利用しており、中には様々な昔の生活文化の資料が展示されている。

なかでも目を引いたのは古いレジスターである。大正の初めころに米国で作られたもので、現在の高級車が買えるくらい高価であったものであった。

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【 栃木蔵の街美術館 】

約200年前に建てられた土蔵3棟を改修し、現在は美術館として利用されている。 通称「おたすけ蔵」と呼ばれ、栃木市に現存する約250の蔵の中でも最古の土蔵群に属するとのこと。

江戸時代にこの蔵の持ち主であった豪商の善野家が、困窮者救済のため多くの銭や米を放出したこととか、失業対策として蔵の新築を行ったなどが「おたすけ蔵」の名の由来である。

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【 横山郷土館 】

明治時代に農産物の商いに成功し、金融業で隆盛を極めたという横山家の店舗。店舗の右半分が麻問屋、左半分で銀行を営んでいたそうである。





【 横山家荷揚げ場 】

横山郷土館横を流れる川。 栃木市役所別館を囲む県庁掘と巴波川を繋ぐ水路のようである。 船をこの水路に横付けし横山家に荷揚げを行っていた。

なお明治16年まで栃木市は県庁所在地であったが当時の県令が宇都宮に県庁を移転してしまい、現在は敷地に巡らされた堀だけが残っている。

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【 栃木市役所別館 】

蔵ではないが1921年(大正10年)に、工事費87,452円04銭をかけて県庁跡地に建てられた旧栃木町役場庁舎。

屋根に時計台を持つ姿は明治時代の洋館風であり、当時は洒落た建物であったのだろう。





【 蔵の街大通り 】

栃木駅から北に延びる蔵の街大通りを歩くと、道の左右に見世蔵を多く見ることが出来る。 また少し横道に入ると、少々崩れかけた土蔵を利用した飲み屋なども見ることができる。

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日光例幣使街道

朝廷から例幣使と呼ばれる勅使が毎年春に徳川家康を祀る日光東照宮に通った道が日光例幣使街道で、栃木市はその宿場町としても栄えた。 本来は奉幣使と呼ばれ、天皇から授けられた金の幣帛(へいはく)を神前に奉納する役目の公卿を指すが、毎年行われたので例幣使と呼ばれるようになったそうである。 この行事は1646年から大政奉還の1867年までの221年間、毎年欠かさずに行われたそうで驚きである。

例幣使街道は中山道の倉賀野宿で分岐し、佐野・栃木・鹿沼を通って日光に通じていた。 現在の栃木市では市内北部の嘉右衛門町の重要伝統的建造物保存地区に多くの古い建物が残り、往時の姿を忍ぶことができる。


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畠山陣屋跡の前に立つ日光例幣使街道の石碑




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【 雰囲気残す現在の例幣使街道 】

蔵の街大通りから左に入った旧日光例幣使街道沿いには、見世蔵をはじめとする江戸末期から昭和前期にかけての建物が多く、往時の雰囲気が伝わってくる。





【 陣屋跡なども残る 】

この写真は平澤商事という現役の店であるが、この先には江戸時代の旗本畠山氏の陣屋なども残る。

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その他の建物


街中を歩くとたくさんの蔵や木造の家を目にする。 建物の名とか由来はすべて判らないが、全体的に重厚感のある蔵が多く「蔵の街」の名にふさわしい雰囲気を持っている。

漫然と蔵を見て歩いても面白くないので、栃木駅の観光案内所でパンフレットを入手することをお勧めする。


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