1万ヒット記念SS:「3つの願い」 1


ここに3人の女がいた。
八百万の神が居ます日の本の国で「萌えの女神・三姉妹」を自称するミミ様、カズ様、ハル様である。三人の神様は下界を眺めては「萌え」を追求していた。
この3人がある時、鷹男という身分あり、金あり、顔よしという萌え対象を発見した。
鷹男サマはあろうことか、まったく萌えのない堅物男に、かっこ良すぎるがゆえに恋しい女性を奪われそうになっていたのである。
ありえん展開に耐えられなかった三女神はアレコレ裏で画策し、自分たちの満足のいくように、波乱万丈の末に鷹男と彼女をくっつけた。
それが【鷹男と瑠璃】というラブラブイチャコラなバカップルなのである。

良い事をしてあげた萌えの三女神は、結果に大人しく満足してればいいものを、二人の愛の遍歴を書きとめて密かに神様ネットに公開していた。
そして、更に驚くことに、それを読むのが楽しみという神様達がこの世にはいたのだから、萌えは偉大だった。

ハル様「ねえねえ、聞いて! とうとうアタシのサイト、1万ヒットなのよ!!」
ミミ様「きゃーー、萌えーーっ!!」
カズ様「ええ、萌えーーーっ!!」
ハル様「でしょう、萌えーーーっ!!」

いやはや神様といっても馬鹿丸出してある。

ハル様「やっぱり1万ヒット記念ってやったほうがいいよね?!」
ミミ様「当然!! あの二人のらぶらぶのくんずほぐれつのスンゴイのを書いてーー!!」
ハル様「あらん、ミミ様、それはあなたの担当でしてよ」
カズ様「だけど最近の二人はソレしかしてないよねぇ」
ハル様「そうなのよ。事件なんか何もないし平和そのもので書く事ないのよねぇ」
カズ様「はいはいはーい、ただのイチャイチャじゃもうつまんないでーす!!」

出会った当初は波乱万丈だった二人に、両手を揉み絞って応援をしていた3人だったが、最近ではすっかり落ち着いてラブラブなので正直食傷気味だったのだ。
当人たちはそれでいいのだろうが、見てるほうはつまらないのである。
萌えがないのである。

ハル様「じゃあ、事件起こしてもらう?」

三人の顔に悪戯な笑顔が浮かんだ。

ミミ様「きゃーー、萌えーーっ!!」
カズ様「ひゃー、萌えーーーっ!!」
ハル様「ええ、萌えーーーっ!!」

そう、無理矢理、2人に波風を立たせる事にしたのだ。

ハル様「どんな事やってもらうのがいい?」
カズ様「誰か他のお馬鹿が割り込んで来るのはイヤだわ〜」
ミミ様「そうよね? 世界は二人のためにあるんだもの」

少し考えてミミ様はこう言った。

ミミ様「アタシ達があの二人のお願いを無理矢理叶えてあげるってどう?」
カズ様「それいい!! 瑠璃なら何か凄いお願いをしそう!!」
ハル様「ついでに艶っぽいシーンも見たい〜」
カズ様「ふふふ、それはお約束よねーーーっ!!」

三人は悪戯心いっぱいで、鷹男と瑠璃の迷惑など考える事もなかった。
萌えさえ見られれば満足なのである。
瑠璃の巻き起こす騒動見たさに、無理矢理願いを叶えるべく下界に下りていったのだった。



そんな事など何も知らない鷹男と瑠璃はどうしていたかというと。
内裏の奥深くにある藤壺御殿では、いつものように瑠璃の叫び声が響いていた。

「今日はしません、絶対しません、いやーーー!!」

何がというとナニである。

「毎日毎日毎日毎日っ!! これじゃあたし、身がもたないっ!!」

世に並びなき寵愛を受けている藤壺女御・瑠璃姫の悩みは切実だった。
これだけ愛されれば女冥利に尽きる。
あちこちで恨み妬みを買いつつ羨ましがられるのは実は気分もいい。
けれど、毎晩のように激しく愛される身は疲れていた。
深窓の姫君と違いそれなりの体力がある瑠璃姫といえども限界を訴えたくなるほどの寵愛ぶりに、もう疲れ果てていた。

「私はあなたが愛しくて愛しくてどうしようもないのです。許してください姫」

瑠璃の好きな優しい声を耳元で囁かれると、どうしていいかわからなくなり、最終的には鷹男のいいなりになってしまう日々。今日こそは騙されるものかと、抱き込もうとする腕を振り払い、瑠璃は叫んだ。

「たまには二人で仲良く枕をならべて寝るんでもいいじゃないっ!!」
「可愛らしいあなたが横にいて我慢できるとお思いですか?!」
「あ、愛してるなら我慢してよ!! あたしが死んじゃってもいいの?!」
「それだけ声を出す元気があれば大丈夫ですよ。」

結い上げた髪からこぼれた毛をかきあげながら鷹男は艶っぽい微笑みを浮かべる。

「それに、いつも最後にはあなたのほうからおねだりしてくるではありませんか?」

真っ赤になって固まってしまった瑠璃を、鷹男はその隙に御帳台に横たえようとした。

「悪霊退散、悪霊退散!!」

はっと我に返った瑠璃は、しっしっし!と、何かとんでもない事を口走りながら飛び退る。

「助けてーー、ここに強姦魔がいますーー。殺されますーー」
「姫、それはあんまりです」
「これから5日間、エッチ禁止よ!! あたしに変な事しちゃダメだからね!!」
「変な事ではありません。夫婦の営みというものは神聖なもので…」
「鷹男のは邪ますぎるのよ!!」
「ひどい仰せだ。では、今宵はあなたの思うとおりに愛でてさしあげますから、ね?」
「全然わかってなーーーい!!」

御殿中に響き渡る痴話喧嘩を繰り広げる二人であった。
瑠璃は溜め息をつき、両手を頭の上に持っていって祈りのポーズをした。

「神様仏様、助けて。どうか鷹男があたしにしばらく悪さができないようにしてーー!!!」

と、その時である。

「その願い聞き届けましょう!!!」

ぼわわ〜ん!!!!
煙がもくもく立ちこめたかと思うと、奇妙な服を着た女性3人が、鷹男と瑠璃の前に出現した。

「物の怪が内裏に現れたか!! 姫、こちらに」

とっさに剣を手にした鷹男が瑠璃姫を背中に庇い、三人をねめつけた。

「「「ぎゃーーー、かっこいいーーー、鷹男ってば最高っっvvv」」」

3人が声を重ねるように叫んだ。

「こほん、私たちは物の怪じゃありませんわ。萌えの女神三姉妹ですの」
「そうよ、今日はハル様のお宅の10000ヒット祝いにやってきたのよ」
「あたし達が何でも願いをひとつずつ叶えてあげるから言ってみてvvv」

「萌え?」
「いちまんヒット?」

鷹男と瑠璃は奇妙な言葉を話す三姉妹の言葉をオウムのように繰り返して首を捻った。

「とにかく、あたし達が神様だから、二人のお願いを何でも叶えてあげるからvvv」
「姫、あやかしの言葉に乗せられてはいけませんよ。萌えの神などというのは聞いた事がありません。実に怪しすぎる」
「あやしくないですってば。瑠璃姫、鷹男がしばらく手を出せなくすればいいんでしょう? 5日ぐらい押し倒せないようにしてあげるからね!!」
「ほんとに?!」

藁をも掴みたい気分だった瑠璃はその言葉に目を輝かせた。

「お願いミミ様って言ってくれればお願い聞いてあげるvvv」
「「お願いカズ様」「お願いハル様」っていうのも残ってるからね。何か願い事があったら言ってね?!」

最初から瑠璃をターゲットにしていた三人は瑠璃に向かってにこやかに微笑んだ。

「馬鹿な事をしてはなりません、姫!!」
「鷹男は黙ってて!! お願いミミ様!! 鷹男がしばらくあたしに手を出せないようにして!!」

どっかーーーーーん!!!!!
とこからともなく爆音が聞こえたかと思うと、瑠璃と鷹男は体に電流が走ったような状態になり、その場に倒れた。

「姫!! だ、だいじょうぶですか、うっ……」

鷹男は視界を殆どなくしながらも、とっさに瑠璃を抱きしめてかばっていた。
しっかりと抱きしめた愛しい人の体を確認するようにもう一度抱きなおす。
そのごつごつした感触に……。
広い肩幅に骨ばった腕。硬く平らな胸……。

「ひ、ひめ? いつからそんな逞しい体に?」

その口から漏れた言葉は少し高くて優しい瑠璃姫のもの。

爆音とともにやってきた白い煙幕が薄れていっても鷹男の思考は止まったままだった。
その腕に抱きしめていたのは……まぎれもなく自分だった。

「なんで私がもう一人?!」
「なんであたしがもう一人いるの?!」

互いの身なりをみやり、手探りで顔や頭を確認し、やがて二人は同時に叫んだ。

「入れ替わってるーーーー!!!」

そして萌えの女神・三姉妹の愉快な声が高らかに響いた。

「「「これがほんとの【ざ・ちぇんじ】よねーーーっ」」」


続く

ネタが浮かばなかったので某同盟のミミタロウ様、和奈様に相談したところ、入れ替わりネタを提供していただきました。ほぼ全ストーリー三人で考えたお馬鹿話です。何話か続きます。

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